【理由】は何ですか?
マジックバーで演じたり、セミナーで教えたりしている【スプーン・フォーク曲げ】ですが、
各時代のメディア等で取り上げられていて、ほとんどの方が存在を知っています。
知名度だけでいえば、一番皆さんが知っている【マジック】ではないでしょうか?
(マジックですよ、間違いなく!!)
面白いことがあります。
【知っている】とはいえ、
皆さん目の前で見たことなどほとんど無いわけですが、
マジックバー等で、初めて目の前で【スプーン・フォーク曲げ】を見たお客様が
必ずといっていいほど調べることは何だと思いますか?
それは【熱】(温度)です。
熱くなってないか確かめる。
そしてほとんどの場合熱くなどないですから、
「熱くない!」と驚く。
つまり、
【熱によってスプーンが曲がっている】と思っている方が
とても多いということなのです。
おそらく過去【スプーン曲げ】を演じていた数々の方も、
【熱】だなんて言ったこと無いのではないでしょうか?
【金属は高熱で曲がる】ということ、
そして指で擦ったりする演技のためにそう思っているのでしょう。
実際に摩擦熱でスプーンやフォークに使う金属が曲がることはありません。
先に指がやけどしますしね。
【スプーン・フォーク曲げ】にはその他に
様々な理由が思い浮かぶのではないでしょうか?
気功? 超能力? 神の力? もしかしたらただの怪力?
スプーンやフォークに仕掛けがある?
正解かどうかはともかく(実際ほとんど間違いですし)、
ほとんどの方が何かしらの【理由】を考えているということです。
【理由をつけた場合と、つけない場合の承諾率のちがい】
を調べたこんな実験結果があります。(心理学者 エレン・ランガ―)
コピー機の順番を待っている先頭の人に、
①先にコピーをとらせてくれませんか? (理由なし)
②急いでいるので先にコピーをとらせてもらえませんか?(本当の理由)
③コピーをとらなければいけないので先にコピーをとらせてもらえませんか?(適当な理由)
と、3通りの聞き方でお願いをしました。
結果①は60%、②は94%、③は93%の人が承諾したのです。
この実験でよく語られるのは、③のような理不尽なお願いだとしても、
何でもいいから「~なので」と理由をつけたほうが承諾してもらいやすいよ、
ということなのですが、
この結果からもう一つ言えることは、
【なんでもいいから結果には理由があった方が安心する。】ということです。
③は『(理由)~だから~(結果)』という文のカタチになっているだけですね。
実際に因果関係があるわけではない。
でも、理由がないよりはいいのです。
『何でだか分からない』ものは人間にとって不安でしかありません。
原因が不明なものは生存に危険を及ぼすかもしれないからです。
だから【理由】を探す。
何でもいいから【理由】をさがして安心したいと思うのです。
例えば【スプーン曲げ】の場合、なぜ曲がるのか分からない。
不安で仕方ない。
だから『熱で曲がっている』や『超能力で曲がっている』という【理由】をつけたがるのでしょう。
『全くなんだか分からない』よりも『超能力で曲がる』のほうが安心するというのも面白いですね。
【理由】を使えば、他人を説得するのも簡単だし逆に騙すこともできます。
ただ『お金が必要なんです!』ではなくて、
『急いでいるのでお金が必要なんです!』なんていう具合。
世の中は原因という【理由】があって結果があるのですが、
それが本当の【理由】なのかは、よく見極めなければいけません。